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偽島に生息する未確認生命体F:フレグランスの記録帳
2017年09月23日 (Sat)
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2009年12月11日 (Fri)

『ティムティム?』
【ブワセック!】

『お話を始めよう。これは偽の島に辿り着いた、ある怪人と、彼を取り巻く人々の物語』


第六夜:ひと時の安らぎ



子供は時折、予測の付かぬ行動に出る。
魔方陣を記憶した後にポフコの起こした行動を語る際、後の彼らは口々にそう言った。
ある者は眉間に皺を寄せながら、ある者は笑いながら。

「ひみつきち!かべ、ぐるーーーーん!」

魔法陣の先に隠し通路が存在する可能性について検討していた大人達は、幼子が一直線に壁へ向かって行く事に気付くのが遅れた。彼女が余りにも小さく、視野から外れていた為に。

ゴン、と小さくはない音が響き渡った瞬間、己の手元にポフコが居ない事に気付いたフレグランスはぎょっとして見回し、そして壁際で頭を抱えて蹲っている彼女を見付けて慌てて駆け寄った。

「ふぇ………」

余程勢い良くぶつけたのだろう、赤く染まった額を押さえるポフコの目尻には今にも溢れそうな大粒の雫。
肩を戦慄かせて、しゃくりあげるように浅く息を吸い上げた少女が泣き声を吐き出そうとした瞬間、怪人は「ああ!」と大声を上げて鉤爪の生えた指の先をぴたりと彼女へ向けた。
ぎょっとして見開かれた瞼の際を、硬い殻のような装甲に覆われた指が拭う。

「ほーら泣かない泣かない、痛いのはぜーんぶ僕が貰っちゃうからさ。
痛いの痛いのー、とんでけ、って人間は言うんだよ」
───ホラ飛んでった!、でしょ?どう?」

人間が用いる気休め、あるいはまじないの言葉を口にする本人はすっかりそれを真に受けている様子で、「人間って凄いよねぇ」などと感心したように言いなが ら拭い取った雫を何処からともなく───突起や凹凸のいずれかに隠し持っていたのだろう───小さな小瓶に取りながら、何度となく頷いている。
その手元で、爪を伝い落ちる無色透明の雫であったはずのものは、薄桃色に色付き、淡い光を放っていた。

フレグランス「やあおかげで良いものが出来た、ほら見てご覧!」

獣と対峙する時にフレグランスが取り出すものに似ているそれは蓋を開けばほんのり甘酸っぱい香りが辺りに漂う。すっかり毒気を抜かれた顔で眼を見開いているポフコの手にそれをひとつ渡し、「さあ行こうか、お買い物だよ!」出口へ、と足を向けた。



遺跡外は多くの人々でごった返していた。
彼らの大半は「始まりの右足」から共に遺跡の中へ足を踏み入れ、似たようなコースを辿って一つ目の魔法陣に辿り着いた者達である。少数ずつが組を作り、或 いは単独で探索に当たる者達同士特別言葉を交わしたり、行き先を相談したわけでもないが、行く先々で道を塞ぐ獣達に対峙する姿を、或いは道すがら拾った素 材から身に着ける装飾品の細工の取り引きを持ち掛け合ったりする内に、何とはなしに見知った顔も出来て来る頃。

彼らが一様に緊張感から開放されて三々五々散って行くのを目にすれば、フレグランスもまた持ち前の好奇心を抑えきれずにふらふらと歩き出した。

「フレグランスさん、お買い物が終わったら今夜は皆で宿でお食事を───」
「わかってるわかってる!後でね!」

ひらひらと手を振りながらその嗅覚に届く未知の香りを辿って露店をひやかし興味の向いた相手に話し掛け、と忙しない姿が雑踏に紛れれば、景元の盛大な溜息が零れ落ちた。

「落ち着きの無い事だ…。然しようやくあの者と離れられる」




(同行者達の日記に前後しています)


【フレグランスは何を買ったの?】
『探索の為の食料を少しと、仲間に頼まれた装飾を作る時の材料をね』
【たったそれだけ? はがねのつるぎ とか、 かたいよろい とかは?】
『彼らはまだまだ探索をはじめたばかり、そんなに余裕はなかったんだよ』


「乾杯!」

常日頃から酒の匂いを漂わせている山の主と、何が楽しいのか笑顔を崩さぬ少年は、上機嫌で杯を干している。
買い物を済ませた後宿の食堂に集まり卓を囲んだ探索者達は、改めて今後の協力を申し出合い、探索の無事を願った壮行会と称してささやかな宴を開いていた。
既に空けられた酒瓶が食卓の上にいくつも立ち並び、彼らの酒量を物語る。

「でさあ!聞いてよこはくん、スパっち、その時かげもっちゃんたらさあ」
「ええい少しは落ち着いて呑まぬか、……それにその呼び名はどうにかならんのか」
「いいじゃないかげもっちゃん!僕達親友じゃないか!」
「……ッ!?」

テーブルを照らす暖かな洋燈の明かりと賑やかな喧騒に包まれて、探索者達の夜は更けるだろう。

「、、、千仭さん、皆さん大分酔っておられるようですが明日からの探索の道筋など、お話しないでも良いものなのでしょうか、、、?」
「大丈夫、何とかなるさ」


『そうだと、いいね。』
『はつかねずみがやって来たよ、今夜のお話はこれでお終い。』



次回──第七夜:新たなる道
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