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偽島に生息する未確認生命体F:フレグランスの記録帳
2017年12月15日 (Fri)
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2009年12月03日 (Thu)

『ティムティム?』
【ブワセック!】

『お話を始めよう。これは偽の島に辿り着いた、ある怪人と、彼を取り巻く人々の物語』

第四夜:襲い来る獣と幼女の涙




青空には果てが無い。
草原の先に見える古びた遺跡の壁が、行く手を遮り全容を見渡す事は出来なかったが、ともかく空は、その先へ続いている。
────始まりの右足、と名付けられた魔法陣を抜けて遺跡の中へと降り立った探索者達は一様に立ち止まり、その光景に見入っているように見えた。
此処は地下、である筈なのだ。
にも関わらず頭上に広がる天蓋の澄み渡る青と降り注ぐ日差しは屋外と変わりなく、草木が茂り起伏に富んだ地形や水場が織り成す風景は時折覗く石造りの床を除けば此処が屋内である事など感じさせない。

「これが全部偽物だってのかい、一体どんな魔法なんだ!」

感嘆を篭めたフレグランスの呟きに、まばらにではあるが周囲から賛同を示す溜息が零れた。
やがて押し固まっていた人々の一角が崩れ、力強い足取りで先を進む者が現れ───以前にも、この島の探索を行っていた者達なのかも知れない───人々は前へと進み出した。

「まずは行ける限りまっすぐに進んでみよう」

景元、千仭、さなぎとそう方針を定めてフレグランスもまた前へと踏み出した。



フレグランス「僕の麗しき仲間達よ、よろしく頼むよ!はは、何事も助け合い、持ちつ持たれつってやつだよね。」

フレグランス「何せ頼るものはお互いしかないんだからね!いやあ、なんだかドキドキしちゃうなあ、僕誰かと行動を共にするなんて初めてだよ」

フレグランス「あ、別に友達がいないってわけじゃないよ、そんな寂しい子ってわけじゃないんだ、ただね、友達は会うとすぐ「フレグランス、今日が貴様の命日だ!」とか」

フレグランス「「今日こそ年貢の納め時だな!」とか言って攻撃して来るんだよね。バイオレンスだよね。」


道々機嫌良く三人に話し掛ける。己でも自覚のある通り他人と行動を共にした経験の無いフレグランスの歩調は、時に身勝手に早まり、また 道草を食っては遅くなり、と安定せぬものであるにも関わらずうんざりとした顔で嗜める景元も、笑顔を崩さぬ千仭も疲れを見せる事はない。 女のさなぎにし ても、おっとりとした外見とは異なり無駄の無い足さばきで遅れを取る事はなかった。

「それにしてもこの空、偽物とは思えない出来だね」

長い睫毛に縁取られた目を眩しげに細めながら千仭の指差した西の空に、傾きつつある夕陽を見たのは行く手にこんもりと茂った森が見えて来た時だった。

「日が暮れるのか」

顔を顰めた景元の言葉に、人は光の無い場所ではものが良く見えないと言う事を思い出す。
体を休めるのに適した場所を探そうと四人が動きを止めた時、気流が僅かに乱れ、フレグランスの鼻梁に香りが届いた。
それは敵意、と呼べるものであったのだろう。
フレグランスが振り向いたのと同時に三人もまたその気配を発する茂みを注視していた。

「何奴」

景元が腰の刀に手を掛けるか掛けぬかの刹那、茂みが大きく揺れ、二匹の野兎と筋骨逞しい緑色の何かが飛び出して来る。獣達は彼我の距離を跳躍し、避ける暇もなく間を詰めて至近距離に降り立った。


「モッサァァァァァァァァ!!!!!」


奇怪な緑色の怪人───フレグランスは己を棚に上げてそう感じた───が雄叫びを上げる。遺跡の入り口で順番を待つ間、他の探索者達から伝え聞いた遺跡の獣達だろう。考えている暇もなく、害意に害意を以ってあたるべく彼らは各々の得物を抜き放ち、身構えた。




「皆、強いんだねえ」

印を結んだ千仭の掌から炎が湧き上がり、獣達を焼く。熱に耐えかねて飛び跳ねた野兎を、さなぎの構えた槍が正確に刺し貫いた。もがくようにして掴みかかっ た緑色の怪人を袈裟懸けに斬り捨てた景元の動きに緊張感なくヒュウ、と口笛めいたものを鳴らしながら、フレグランスは鞭に変じていた腕を振るい、元の長さ に引き戻した。
倒れた獣達に歩み寄り、緑色の───歩行雑草、と探索者に呼ばれる獣の体から香気を取り出しながらそう感想を述べる。

「だって皆、今本気じゃなかったでしょ。
出し惜しみってやつ?
あは、僕もだけどね!」

あっさりと蹴散らした感のある初戦では、実際互いの手の内を見せ合う事無く終えた感がある。
ただ、己が考えた以上に彼らの戦い振りは手馴れたものであった。乱れた着物をさり気無く直し、物騒な得物を懐に仕舞い込んだ少女がはにかむようにおっとりと笑う。

「そうですね、皆さん本当に」

だがその笑顔は中途で俄かに曇った。

「泣き声、、、」




────うぅ、いたいよぅ、おかあさん…おと、さん…

幼子がしゃくり上げる声が遺跡の中を往く。
塩辛い涙の香りを追ってフレグランスは三人の手を引き、背を押して──遺跡に連れ込んだ時と同様に──日も落ちようと言う草原を駆け、茂みに頭を突っ込んだ。

同様に泣き声を耳にして駆け付けたのであろう先客の探索者の、ふさふさとした尻尾がもふっと顔に掛かったが、それを暖簾のように潜り抜けて目の前に出る。
どうやら急に大人達に囲まれて驚いたのであろう幼子が、ようやく口を開いて要領を得ぬ様子で語り出した言葉によれば、この遺跡には宝を探すだけでなく力の無いものを狩り金品を奪おうとする輩が居るのだとか。

「おうちでは、こんなに泣き虫じゃない、のよ」

ポフコと名乗り、強がっているのだろうか懸命に言い訳めいた言葉を口にする子供の姿に、居合わせた探索者の少年がにんまりと笑みを浮かべた。

「いないいないモッサァァ!!!」

唐突に大声でおどけて見せる。
手を開いて笑顔を覗かせる少年に続いて、フレグランスも異形の顔を両の手で隠した。

「いないいな~~い」

フレグランス「モッサァァァァァァァァ!!!!!



【それからフレグランスはどうしたの?】
『その時出会った探索者──尻尾の生えた琥珀と、悪戯者のスパルヴィエロと、それから可愛いポフコと、一緒に探索をする事にしたんだよ』。
【仲間は多い方が心強いものね!】
『そうだね、それを知ってしまったら、一人で泣いている子を放っておく事なんか出来ないだろう?』

(同行者達の日記にリンクしています)

『はつかねずみがやって来たよ、今夜のお話はこれでお終い。』


次回──第五夜:魔法陣
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自慢の逸品
余りのかわゆさに飾らずにはいられない
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